材料の学習〜プラスチック(生分解性プラスチック)


生分解性プラスチックが分解されていくようすを調べてみよ


 「マイクロ・プラスチック」による海洋汚染が問題として注目されるようになっています。
 海に流出した石油を由来とするプラスチックを材料に使った廃棄物が、波力・温度差・紫外線などによって5mm以下に砕かれます。これを「マイクロ・プラスチック」と呼んでいます。これには、プラスチック製品の原材料として流通している「レジン・ペレット」や、研磨剤として使われているポリエチレンの粒子である「マイクロ・ビーズ」(歯磨き用のペーストや化粧品に含まれています)も含まれます。
 これらのプラスチックは、石油からつくられるため、「PCB(ポリ塩化ビフェニル)」などの有害物質を吸着しやすく、その濃度は海水の10万〜100万倍にも達するとされています。こうしたマイクロ・プラスチックを魚や鳥が食べてしまうことによって、さらに生物濃縮されて問題はさらに深刻になっていきます。すでに、ベーリング海の死んだ海鳥12羽の脂肪から「PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)」(プラスチックに添加されている難燃剤)が検出されており、人間が摂取すると神経障害を引きおこす有害物質とされています。メダカが肝機能障害を起こしたという報告もあります。
 海洋におけるプラスチックごみの調査は、2014年、東京海洋大学の練習船「海鷹丸」を使って、全国規模の調査が日本で初めて行われはじめたばかりです。

 石油を由来とするプラスチックは、理論的には、数100年〜数1000年の間、自然界に安定的に残存すると言われています。

 こうした問題からも、「生分解性プラスチック」が新しい材料として注目されはじめています。


 生分解性プラスチックを使った製品がだんだん増えてきました。製品そのものの材料、あるいは包装材などに表示されているものをよく目にするようになりました。

 


電池のパッケージ


封筒の宛先窓部分の透明フィルム



ラップを切断するための刃に生分解性プラスチックが使われています。
使いやすさも含めて「GOOD DESIGN」に認定されています。

飲料のパッケージ


駅弁の容器


セロファンテープ


コーヒーの包装材


歯ブラシ


1998年に開催された長野オリンピックで使用されていた食器、スプーン、フォーク、ナイフ
(経年変化のためか、スプーン、フォーク、ナイフは折れてしまいました・・・)

 生分解性プラスチックが実際に分解されていく様子を観察できるような実験はできないかと考えています。技術科の材料や環境に関する学習内容としていくためには、実験の期間があまり長期間にならないこと、経費がかからないこと、手軽に出来ることがよいと思います。そこでいろいろ試みていくことにしました。


生ごみから有機肥料(堆肥)をつくる装置「コンポスト化装置」をつくって、その中に生分解性プラスチックを埋めて変化を調べてみることにします。
「コンポスト化装置」そのものも、生物育成の技術や環境の学習に使うことができます。

「ピートモス」と「燻炭(くんたん)」、ダンボール箱で簡易コンポスト化装置を作ります。

ピートモス (英: Peat moss)
 泥炭(でいたん)を脱水、粉砕、選別したもので、農業、園芸用土、もしくは土壌改良材として用いられます。

燻炭(くんたん)
 籾殻(もみがら)を蒸し焼きにした土壌改良材です。


ピートモスと燻炭(くんたん)を大きな袋の中でよく混ぜてからダンボール箱の中に入れます。
ピートモスと燻炭の割合は3:2
ピートモスは10リットルで約400円、燻炭(くんたん)は12リットルで約400円
(ホームセンターや園芸店で購入できます。)


箱の中は毎日1回はよくかき混ぜることを行っていきます。


りんごの芯部分、みかんやバナナの皮などを細かく切断してよく混ぜます。
野菜屑、食べたあとのトウモロコシ、梨の芯、パイナップルの皮、卵の殻、秋刀魚の頭と骨・・・
動物系のものは、悪臭の発生源となるので、あまり入れない方が良いということです。

緑色のクリップが付いている方が「生分解性プラスチック」(封筒の宛名窓部分に使われている透明フィルムを切り取ってあります。)
石油由来のプラスチックと比較できるようにします。


温度も測定できるように温度計をさしておきます。
生分解性プラスチックは、ある程度の高い温度で分解されるように設計されて作られているため、コンポスト内の温度上昇がポイントとなります。
簡易コンポストでは、ゴミの分解がうまく進行すると摂氏30〜60度になると言われています。


技術室内に置いて実験を行っていくため、生徒たちにもわかるように解説を貼っておきました。
興味を示す生徒がいるかな?(^^)


次は、腐葉土の中に埋めて同様の実験をやってみます。
腐葉土は30リットルで約500円


ピートモスと燻炭(くんたん)で作った簡易コンポスト装置の場合と同様に、
箱の底にダンボールを補強のために敷いておきます。
みかん箱が比較的丈夫なダンボールでできています。
取っ手の穴や箱の底のつなぎ目にガムテープを貼っておきます。
ダンボール箱は、スーパーマーケットでいただいてきました。そのため「軽井沢」って書いてあるんです(^^;)


さらに、「堆肥化促進材」を使ったものもやってみたいと思います。

ピートモス+燻炭(くんたん)+「堆肥化促進材」
バナナの皮は朝食べたもの(^^) みかんの皮は給食に出たものを使いました。
みかんの皮をはさみで切っていたら、「いい匂い!」と生徒が見に来ました。
このコンポストを知っている生徒もいました。
冬季に屋外では凍結してしまうため、屋内で使えるように北海道で使われ始めたということです。
室内に置いた状態でも、悪臭はほとんど感じられません。


左:生分解性プラスチック(植物由来のプラスチック)  右:石油由来のプラスチック

約1年半後
触ってみると、従来の石油由来のプラスチック(右)は、それほど劣化がありませんが、
生分解性プラスチック(左)は、パリパリ崩れやすくなっていて劣化が感じられました。

石油を由来とするプラスチックは、理論的には、数100年〜数1000年の間、自然界に安定的に残存すると言われています。


小中学生にとっては、五感を伴った実物で確かめる学習は、
PCやタブレットなどで写真を見るだけの「わかったつもり」の学びに陥らないようにするためにも大切だと考えています。
実験・実習で試行錯誤や体験を通じて、手触りやにおいや音を伴って学んでいくことが、探求心を生んでいくことにつながると思います。


生分解性プラスチックとは?(グリーンジャパン)

日本バイオプラスチック協会


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